演劇批評

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「ぼくらが非情の大河をくだる時~新宿薔薇戦争~」 2022.10.23 新宿シアタートップス

 昨年、昭和の劇作家の旗手の一人であった清水邦夫が亡くなった。いろいろな意味で刺激的、問題提起が含まれた作品を遺した作家であり、「追悼」の意を込めてだろうか、最近、清水作品の上演を見掛ける機会が増えたようで、これはよいことだ。今回は、「劇団3〇〇」が新宿のシアタートップスでの上演で、主宰の渡辺えりが演出に当たっている。

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『トーマの心臓』 2022.09.15 シアターサンモール

 一つの劇団が歴史を紡いで行くのは大変なことだ。更に、その歴史の中で繰り返し上演のできる「財産演目」を持てる苦労を重ねるのはも一つ大変だが、幸福なことでもある。

 男性の俳優のみで構成されている劇団「スタジオライフ」。1985年以来、37年の歴史を重ねる中で、劇団創立10年の1995年に初演された『トーマの心臓』。漫画家の萩尾望都原作の同名作品を舞台化し、今回で10回目の上演となる立派な財産演目だ。ドイツの男子寄宿学校で亡くなった少年に瓜二つの少年が転向してくる。そこで揺れ動く少年たちの心を描いたものだ。

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「スカラムーシュ・ジョーンズあるいは七つの白い仮面」 2022.08 本多劇場

 芭蕉に「おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな」という有名な句がある。加藤健一が長年演じ続けた一人芝居『審判』につぐこの一人芝居を観て、ふとこの句を想いだした。

 ロンドンの劇作家、ジャスティン・ブッチャーが描いたこの作品、1999年12月31日のミレニアム・イブに、1899年12月31日生まれ、つまりその日に100歳を迎える道化師、スカラムーシュが過去を語る内容だ。『審判』が2時間40分というギネス物の一人芝居で、この作品は1時間40分。1時間短いと言えばそれまでだが、たった一人で喋りながら、劇場中の神経を自分だけに集中させるのは至難の技だ。

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「弥次喜多流離譚(リターンズ)」 2022.08 歌舞伎座

 ここ数年間で、8月の歌舞伎座の「風物詩」となった松本幸四郎、市川猿之助のコンビによる「弥次喜多」シリーズ。元はご承知、江戸時代の十返舎一九の『東海道中膝栗毛』だが、実はこの弥次喜多のコンビ、この作のヒットに味を占め、東海道の後は「金毘羅詣り」だの「木曾巡り」だのとシリーズ化された、江戸期の大ヒット作品だ。原作がそういう性質のものであれば、こうして主人公だけは変えずに趣向をどんどん変えながら続演していく方法は江戸時代そのままとも言える。

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「ダディ」 2022.07 東京グローブ座

 最近、「LGBTQ」など性的マイノリティに対する理解が広がりを見せている。この「ダディ」も、男性同士の物語だが、それを受け入れる社会のありようという点でもう一歩踏み込んだ、一口で言えば「重さ」を孕んだ作品である。ニューヨークやロンドンで話題になっているのも、単にマイノリティと呼ばれる人々が大手を振って歩ける社会、という事のみではなく、そういう時代がいつか来たとしても、表面とは別に抱えている「心の闇」や「苦しみ」に焦点が当てられているからこそだろう。特に、キリスト教がイギリスやアメリカほどに根付いていない日本では、「神」に対する想いの強さがどこまで観客に伝えられるか、などの問題もあり、難しい作品だとも言える。しかし、小川絵梨子の演出が人物の心の襞を丁寧に描いているので、難解なテーマながらもすっと胸に落ちて来る。

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文化座『しゃぼん玉』 2022.06.08 俳優座劇場

 今年創立80年を迎えた劇団「文化座」。和暦で言えば昭和17年、戦争真っ最中に誕生した劇団である。創立メンバーの一人でのちに代表を務めた鈴木光枝から、息女の佐々木愛に引き継がれ、他の劇団にはない味わいを持った作品を提供し続けている姿勢は貴重だ。

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六月歌舞伎座 第二部 『信康』

 2009年に亡くなった劇作家・田中喜三(きぞう)の新歌舞伎『信康』。徳川家康の嫡男として生まれ、「戦の天才」との誉が高かったが、妻・徳姫の父でもある織田信長の勘気を蒙り、21歳の若さで切腹に追い込まれる、という物語だ。なぜ信長が信康を切腹させたのか、理由は諸説あるようで、最も一般的とされている信康の母・築山殿と徳姫の折り合いの悪さや、天性の信康の戦の才能を信長が危惧したためと言われる説に基づいて一幕三場の芝居に仕立ててある。

 この作品は新作歌舞伎を対象とした「大谷竹次郎賞」の受賞作で、初演は1974年、当時、澤村精四郎(きよしろう)を名乗っていた現・澤村藤十郎の信康に、五世中村富十郎の父・家康。その後、1996年に、市川新之助(現・市川海老蔵)の信康に十二世市川團十郎の家康で上演され、今回が三回目の上演となる。

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「命(ぬち)どぅ宝」 2022.01.27 亀戸文化センター

  劇団文化座の創立75年の2017年に、杉浦久幸が書き下ろした『命どぅ宝』。タイトルからもわかるように、沖縄を描いた作品だが、コロナ禍で予定通りの上演ができないケースにも遭いながら創立80年、そして沖縄返還50年を迎える節目の2022年、長いツアーに一区切りを付けることになった。

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「ある王妃の死」 2022.01.21 東京芸術劇場 シアターウエスト

 日本と韓国の関係は相変わらずいろいろな問題が横たわり、決して良好な関係とは言えない。その一方で、第四次とも言われる「韓流ドラマ」のブームをはじめ、K-POPなどのエンタテインメント分野での交流は、若い世代を中心に盛んである。政治的な問題に関して、日韓双方の批判合戦は分からないではないものの、双方がお互いの事を知らないままに批判を繰り返しているような気がしてならない。

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「ソーホー・シンダーズ」2021.12.04 紀伊国屋サザンシアター

 ここ暫くの間で、「LGBT」など「性的マイノリティー」に対する理解が急速に深まりつつある。時代の趨勢で、これまで苦しみ悩んでいた人には朗報だが、まだまだ偏見が多いのも事実だ。そうした現在、男性同士の恋愛が三角関係で揉めながらもハッピー・エンドで終わる作品がミュージカルで上演される時代になった。2019年3月に日本で初演されて以来の再演で、コロナ禍の中でも人々に勇気を与え、「愛の力」を知らせる作品だ。

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