演劇批評

「からゆきさん」 2020.01.17 本多劇場

昭和の後半に、「ジャパゆきさん」という言葉があった。当時はまだ貧しく、発展途上にあった東南アジアを主とする国々の女性が、日本へ「出稼ぎ」に来て、故郷へお金を送る。しかし、男性ではなく「女性」であるところに、哀しみと日本の「恥」の歴史があるとも言えるだろう。日本と韓国との間で先の大戦期間の「従軍慰安婦」の問題がやり取りされていることはここでは触れないことにする。それよりもはるか以前、日本から海外諸国へ女性が出稼ぎに行く「からゆきさん」たちがいた。「から」は、恐らく「唐」だろうが、中国だけを指すのではなく、東南アジア、ロシアなど、日本から比較的近い海外諸国を意味したようだ。

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エッセイ

第三回「教えると教わる」2020.01.20

 教員の資格を持っているわけではないが、社会人大学や企業、俳優養成所などで、「講義」の形でお喋りをすることが多い。長いものは丸一日かけて、休憩を挟みながらではあるが8時間というものもあり、聞く方の辛さを考えると申し訳ないような気がする。  内容は専門の芝居をはじめ、日本の伝統や文化などあれこれだが、ここ数年の間に感じていたことが最近は確信に変わった。いろいろなことを知っている「フリ」をして教えているような顔をしてはいるものの、実はそのために、聴衆の方々から「教わって」いるのだ。

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エッセイ

第二回「ためつすがめつ」2020.01.13

このエッセイのタイトル「ためつすがめつ」とは、あまり耳に馴染みのない言葉かもしれない。漢字に直すと「矯めつ眇めつ」となり、物事を様々な角度からじっくりと眺めるとの意味である。歌舞伎の人気演目『寺子屋』の中で、重要な人物の首を討ち、それが本物かどうかを確かめる「首実検」の場面がある。ここで、義太夫が「眼力光らす松王が ためつすがめつ 窺い見て」と語る。この場面の緊迫感が好きで、タイトルに選んだという次第。

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