演劇批評

「炎の人」2020.02.20 スペース・ゼロ

三好十郎がゴッホの半生を描いた名作『炎の人』を始めて観たのは、手元の控えによると「1989年」とあり、30年以上前のことだ。この折は、ゴッホを当たり役にしていた瀧澤修主演の「劇団民藝」による舞台で、最初は海外の作家による芝居かと勘違いした。それほどに骨太に物語が編まれ、台詞が力強さを持っていた。加えて、海外の物語だったから、余計にその感覚を強く持ったのだろう。以来、他の俳優が演じたゴッホも観てきたが、作者と由縁が深く、多くの三好作品を上演している「文化座」では、昭和42年以来53年ぶりの上演となる。

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演劇批評

「二月歌舞伎座 昼の部」 2020.02.18 歌舞伎座

 今月の歌舞伎座は、来月二十七回忌を迎える十三世片岡仁左衛門の三人の子息、五代目片岡我當、二代目片岡秀太郎、当代の片岡仁左衛門がそれぞれに自分の演目を出し、興行全体を銘打っているわけではないが、故人に由縁の深い演目で偲んでいる。

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エッセイ

第七回「一世一代」 2020.02.24

 ジャンルに関係なく、その役や演目を「演じ納める」ことを「一世一代」と言う。一般的にも、相当な労力を必要とする大仕事に取り組む時などに使う場合もあるようだ。  今までにずいぶん多くの「一世一代」の舞台を観てきたが、この表現は歌舞伎などの古典芸能の方が使用頻度は高いようだ。もちろん、どこの誰が使っても構わず、「一世一代」と銘打って演じた舞台が非常に好評で、「一世一代ふたたび」とした例なども少なくはない。2016年に82歳で急逝した平幹二朗は、40年近くの歳月をかけて演じた『王女メディア』を一世一代で演じ、その後「一世一代、ふたたび」として演じた。寿命を保っていたら、「みたび」もあったかもしれない。

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