エッセイ

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057.『ウーマン・イン・ブラック』作:スーザン・ヒル 2018.06.04

 「ゴシック・ホラー」と呼ばれる文学などの体系があり、好む読者も多い。神秘的・幻想的な題材を含む小説が1700年代後半からイギリスで流行し、「ゴシック小説」として広がりを見せ、その一部の恐怖・怪談小説などが「ゴシック・ホラー」として広がったものだ、と考えるのが一般的だろう。今、ホラー小説と呼ばれている作品群の源流である。 続きを読む

056.『摂州合邦辻』(せっしゅうがっぽうがつじ)2018.05.28 古典歌舞伎

 安永2(1773)年に大坂の人形浄瑠璃で初演され、歌舞伎に移した作品。後妻に入った家で後継ぎを巡る争いが起きており、義理の仲ではあるが息子の俊徳丸を助けるために、偽りの不義の恋を仕掛け、顔の様相が変わる毒酒を呑ませた玉手御前。実家へ帰った玉手は、真実の狙いを隠し、俊徳丸への恋心を得々と述べる。人の道にも女の道にもはずれたと、今は小さな庵室にいる父の合邦は怒り狂い、思わず玉手を刺す。苦しい息の中、玉手が語った真実とは…。 続きを読む

私が選んだ100本 055.『あ・うん』作:向田邦子 2018.05.21

 1981(昭和56)年8月22日、台湾での飛行機墜落事故により51歳でその生涯を閉じた、というニュースは衝撃的だった。その前年には、本業の脚本以外に短編小説の連作シリーズで第83回直木賞を受賞し、ここで紹介する『あ・うん』をはじめ『阿修羅のごとく』など、破竹の勢いとも言える快進撃のさなかに、ふっと眼の前から消えてしまった。潔すぎるほどに。 続きを読む

「追悼 星由里子さん」

「追悼 星由里子さん」

 前日に、歌手の西城秀樹の訃報が全国を駆け巡り、一世代上のヒーローの死去にショックを受けていた翌朝、女優の星由里子さんが74歳で「急逝」のニュースが飛び込んで来た。身体を悪くしているという話が公表されていなかっただけに、そのショックは前日の西城秀樹とはまた違った感覚と得も言われぬ喪失感と寂しさが襲った。 続きを読む

私が選ぶ100本 054.『芸阿呆』作:安藤鶴夫2018.05.14

 昭和の中期に活躍した演劇評論家で小説家でもあった安藤鶴夫(1908~1969)。姓名を略して「あんつる」と呼ばれたり、喜怒哀楽の変化が激しかったために「感動する夫」ともじられたりもして親しまれた一方、対象とする相手の好き嫌いが激しく、それを問題とされることもあった。自身が義太夫の太夫の息子であったことから、義太夫への愛着も深く、三代目竹本大隅太夫(1854~1913)にまつわるエピソードを語り風にしたのがこの『芸阿呆』だ。相方で三味線を勤めていたのが名人と呼ばれた二代目豊澤團平(1828~1898)で、二人の物語を中心に、芸の世界の苛烈な生き方を描いたものだ。 続きを読む

私が選んだ100本 053.『花咲くチェリー』作:ロバート・ボルト 2018.05.07

 人には誰しも「夢」がある。叶えられるかどうかの問題ではなく、夢を叶えようとする意欲が大切なのだ、とも言う。生き難い現代社会の中で、「これだ」という夢を持ち、そのために邁進し、努力を重ねるのは容易なことではない。しかし、我々の長い歴史の中で、もっと厳しい時代はいくらもあったはずで、「夢」を見たり持てたりするだけでも幸福だ、と思わなければいけないのかもしれない。 続きを読む

私が選んだ100本 052.『華々しき一族』作:森本薫 2018.04.30

 昭和の演劇に詳しい読者であれば、森本薫(1912~1946)の作品を取り上げるのであれば、文学座の杉村春子が生涯を賭けて947回にわたって演じた『女の一生』を、という声もあるだろう。34歳で夭折した作家は、家庭を持っていたが愛する杉村春子のために何本かの作品を遺し、いずれも杉村は大切に生涯演じ続けた。70年に及ぶ女優人生の最期の舞台になったのも、この『華々しき一族』だった。 続きを読む

私が選んだ100本 051.『桜鍔恨鮫鞘』(さくらつばうらみのさめざや) 古典歌舞伎 2018.04.23

 この芝居の略称を『鰻谷』と呼ぶ。大阪に今も残る地名だ。歌舞伎の中では割合に古いもので、人形浄瑠璃での初演が安永2(1774)年のことで、作者などは不詳とされている。元禄期に、古手屋八郎兵衛が、女房のお妻を殺す事件が実際に起き、これが浄瑠璃・歌舞伎の作品に取り入れられて一つの作品群になった。その中で、上演頻度は少ないながら今はこの『鰻谷』だけが残った、と言ってもよいだろう。 続きを読む

私が選んだ100本 050.『タナトロジー 死ぬ技術』作:内村直也 2018.04.16

 先日の新聞記事に、30年後の日本人の高齢化率に伴う人口減少の眼を覆いたくなるような予想が記されていた。あくまでも「予想」ではあるが、問題にされながらも明快な解決策が打ち出せないままに時が過ぎているのが現状だ。「人生は100年で考えろ」といきなり言われても、いったいいつまで働かされるのだろうか、それまでの肉体的・経済的問題はどうなのか、と我々庶民は不安になるばかりだ。 続きを読む

私が選んだ100本 049.『罠』作:ロベール・トマ2018.04.09

 何のインタビューだったか思い出せないが、名女優・杉村春子が、「芝居の世界で一番偉いのはどの職分か」というような質問に対し、「そりゃあ、あなた、脚本家ですよ。あたしたち役者は、台本がなければ何も喋れないんですから」と答えたのを覚えている。同じ舞台を創るのに職分に優劣を付ける必要もないが、杉村の感覚や言わんとするところはよくわかる。日々、種類の違う舞台を観ていて、いかに脚本が重要か、ということを批評家の立場で痛感しているからだ。 続きを読む

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