この公演が、今回の帝国劇場公演の千秋楽、3月31日で通算1,700回を迎えるそうだ。回数もさることながら、主演の堂本光一が今もなお、よくぞ走り続けているものだと思う。この作品のキーワードになっている「Show must go on」ではないが、堂本自身、何があろうとこの作品を演じ続けるのだ、という一回一回の覚悟の積み重ねが生み出した数字である。 歳月を重ねることで表現が巧みになる一方で、肉体の衰えは防ぎようがない。しかし、その差を最小限に留めるべきストイックなまでの日々がなければ、ここまで続けることはできなかっただろう。
続きを読む
「音楽は神と子供の領域である」と言ったのは誰だったろうか。言葉のやり取りが必要ないという点では、どこの国の音楽も楽しむことができる。そういう意味では、「世界の音楽はすべての人々のものだ」とも言えよう。 続きを読む
耐震補修工事などで三年以上休館していた京都・南座で「吉例顔見世」の幕が開いた。通常、京都の顔見世は師走の風物詩と決まっているが、今年は十一月が新装開場に「高麗屋三代襲名披露」が加わり、十一月から歌舞伎の幕が開いた。お正月の歌舞伎座から始まった三代襲名披露興行も、四月の名古屋・御園座、六月の福岡・博多座、七月の大阪・松竹座を終え、大劇場での最後を歌舞伎発祥の地・京都で幕を開けたことになる。 続きを読む
1973年に、佐藤B作を中心に結成された「劇団東京ヴォードヴィルショー」。今年で45年の歴史を刻んでいることになる。喜劇に特化した歴史を持つ劇団という点では、「劇団NLT」と双璧をなす存在だ。今回は、「ラッパ屋」の鈴木聡の作品『終われない男たち』を文学座の鵜山仁が演出し、出演者も佐藤B作、あめくみちこ、佐渡稔、石井愃一、市川勇、山口良一らの劇団メンバーに、「ラッパ屋」から石倉三郎、綾田俊樹らが客演として加わった豪華なメンバーだ。 続きを読む
国を問わず、実在の人物をモデルにした映画・演劇は数多い。その人の人生が魅力的であったり、ドラマティックであったりする場合や、多くの人が知る人気者などが素材になっていることが多いが、時に無名の市井の人でもある。パターンもいろいろで、時に「偉い人のお話」になる場合もあれば、あまり都合のよくない出来事は舞台化の折に割愛するケースもある。 続きを読む
だいぶ長い間歌舞伎を観ているはずだが、「ハレルヤ」が流れる中、歌舞伎座の緞帳が降りるのは初めての経験である(笑) 続きを読む
立川志の輔と「下北沢」の付き合いは長い。毎年夏に本多劇場で『怪談 牡丹灯籠』を語るようになってから10年以上になるが、その遥か以前からもっと小さな劇場での独演会を開いており、トータルで30年以上、小劇場演劇の盛んなこの町での公演を続けていることになる。 続きを読む
作品の批評に入る前に、書いておきたいことがある。公演拠点の一つとしてこの劇場を使う機会が多いシス・カンパニーでは、「シアタートラム」での上演の場合、作品の上演時間は「90分以内」と決めているそうだ。上演時間は、現在の演劇界にとって重要な問題でありながら、検討される機会も話題になる機会もない。批評家を標榜し、各地の劇場を歩いている中で、明らかに「長い」と思う芝居が増えた。時に、休憩を入れて3時間半から4時間というのは、肉体的にも負担が大きい。ジャンルにより基準になる時間の計り方も違う。大劇場公演は、基本的に2回の休憩を挟んで4時間前後というのが一つの目安になっているようだ。中には、幕間の食事時間の都合で、一幕目は一時間前後でというケースもある。一方、小劇場では、幕間なしで一気に上演をすることも多いが、その場合、2時間を超えることも少なくない。私個人の感覚で言えば、舞台に集中できるのは80分から90分だ。時間を忘れさせてくれるほど面白い舞台なら話は別だが、一幕で100分を超え、僅かな休憩時間で女性の化粧室の列が途切れないうちに次の幕の開演ブザーが鳴る、という光景はあちこちで見ている。 続きを読む
一月に歌舞伎座で幕を開けた「高麗屋三代襲名披露公演」が四月の名古屋・御園座を経て、博多座で幕を開けた。今月は、新・市川染五郎は学業のため、舞台での披露は九代目松本幸四郎改め二代目松本白鸚、七代目市川染五郎改め十代目松本幸四郎の親子を中心に、坂田藤十郎、片岡仁左衛門、中村梅玉、中村魁春、中村鴈治郎、市川高麗蔵、大谷友右衛門らの顔ぶれだ。 続きを読む
今の我々は、必ず訪れる「死」を必死で見ないように、あるいは触れないようにと、全力を以て遠ざけている。いつの間にか人生は100年の時代になり、「健康のためなら死ねる」というジョークがその意味をなさなくなってしまった。健康で長生きをしなければ損をしたかのような風潮で、きちんと死に対面もしようとしなければ、日常的に死を想うこともない。哲学者「メメント・モリ」(死を想え)という深遠な言葉など糞くらえ、と言わんばかりだ。 続きを読む