演劇批評

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「からゆきさん」 2020.01.17 本多劇場

昭和の後半に、「ジャパゆきさん」という言葉があった。当時はまだ貧しく、発展途上にあった東南アジアを主とする国々の女性が、日本へ「出稼ぎ」に来て、故郷へお金を送る。しかし、男性ではなく「女性」であるところに、哀しみと日本の「恥」の歴史があるとも言えるだろう。日本と韓国との間で先の大戦期間の「従軍慰安婦」の問題がやり取りされていることはここでは触れないことにする。それよりもはるか以前、日本から海外諸国へ女性が出稼ぎに行く「からゆきさん」たちがいた。「から」は、恐らく「唐」だろうが、中国だけを指すのではなく、東南アジア、ロシアなど、日本から比較的近い海外諸国を意味したようだ。

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『菊一座令和仇討』2020.01.06国立劇場

国立劇場の正月公演を、二世尾上松緑、初世尾上辰之助など、懐かしい顔ぶれの音羽屋一門が担うようになってからずいぶんになる。その間、復活狂言、通し狂言などを上演しており、今年は元号が「令和」と改まって最初に迎えるお正月であることから、元号をタイトルに読み込んで、『四谷怪談』などで有名な鶴屋南北の原作『御国入曽我中村(おくにいりそがなかむら)』を、国立劇場文芸研究会がアレンジしたものだ。

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「烈々と燃え散りしあの花かんざしよ」 2019.08.16 ザ・スズナリ

 ここしばらく、連日のように日本と隣国・韓国の関係に関する話題が途切れない日はない。金守珍(キム・スジン)が代表の「新宿梁山泊」で、シライケイタ作、金守珍の演出で「烈々と燃え散りしあの花かんざしよ」を上演している。

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『妹背山婦女庭訓』(いもせやまおんなていきん)文楽 2019.05.15 国立劇場小劇場

東京では相変わらず完売の好況を続けている文楽。しかし、歌舞伎のように毎月公演があるわけではなく、公演期間も二週間余りと短いのは残念な限りだ。

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『Endless SHOCK』

 この公演が、今回の帝国劇場公演の千秋楽、3月31日で通算1,700回を迎えるそうだ。回数もさることながら、主演の堂本光一が今もなお、よくぞ走り続けているものだと思う。この作品のキーワードになっている「Show must go on」ではないが、堂本自身、何があろうとこの作品を演じ続けるのだ、という一回一回の覚悟の積み重ねが生み出した数字である。 歳月を重ねることで表現が巧みになる一方で、肉体の衰えは防ぎようがない。しかし、その差を最小限に留めるべきストイックなまでの日々がなければ、ここまで続けることはできなかっただろう。

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「テュルク世界の大いなる遺産」2018.11.20 めぐろパーシモンホール

 「音楽は神と子供の領域である」と言ったのは誰だったろうか。言葉のやり取りが必要ないという点では、どこの国の音楽も楽しむことができる。そういう意味では、「世界の音楽はすべての人々のものだ」とも言えよう。 続きを読む

「當る亥歳 吉例顔見世興行」夜の部

 耐震補修工事などで三年以上休館していた京都・南座で「吉例顔見世」の幕が開いた。通常、京都の顔見世は師走の風物詩と決まっているが、今年は十一月が新装開場に「高麗屋三代襲名披露」が加わり、十一月から歌舞伎の幕が開いた。お正月の歌舞伎座から始まった三代襲名披露興行も、四月の名古屋・御園座、六月の福岡・博多座、七月の大阪・松竹座を終え、大劇場での最後を歌舞伎発祥の地・京都で幕を開けたことになる。 続きを読む

『終われない男たち』2018.09.19 本多劇場

 1973年に、佐藤B作を中心に結成された「劇団東京ヴォードヴィルショー」。今年で45年の歴史を刻んでいることになる。喜劇に特化した歴史を持つ劇団という点では、「劇団NLT」と双璧をなす存在だ。今回は、「ラッパ屋」の鈴木聡の作品『終われない男たち』を文学座の鵜山仁が演出し、出演者も佐藤B作、あめくみちこ、佐渡稔、石井愃一、市川勇、山口良一らの劇団メンバーに、「ラッパ屋」から石倉三郎、綾田俊樹らが客演として加わった豪華なメンバーだ。 続きを読む

『ジャージー・ボーイズ』(JERSEY BOYS)2018.09.10 シアタークリエ

 国を問わず、実在の人物をモデルにした映画・演劇は数多い。その人の人生が魅力的であったり、ドラマティックであったりする場合や、多くの人が知る人気者などが素材になっていることが多いが、時に無名の市井の人でもある。パターンもいろいろで、時に「偉い人のお話」になる場合もあれば、あまり都合のよくない出来事は舞台化の折に割愛するケースもある。 続きを読む

八月 歌舞伎座 「八月納涼歌舞伎第二部」2018.08.22

 だいぶ長い間歌舞伎を観ているはずだが、「ハレルヤ」が流れる中、歌舞伎座の緞帳が降りるのは初めての経験である(笑) 続きを読む

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