演劇批評

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歌舞伎座 六月公演昼の部『新薄雪物語』   2015.06.08  歌舞伎座

 昼夜に分けて、ふだんは上演しない『正宗内』まで通しての上演である。昼の部は、橋之助、魁春、芝雀らの『天保遊侠録』の後に、『新薄雪物語』の「花見」、「詮議」と上演し、夜の部では「広間」「合腹」「正宗内」を上演し、最後が踊りの『夕顔棚』で打ち出し。 続きを読む

「明治座 五月花形歌舞伎 夜の部」 2015.05.09 明治座

 明治座でも恒例になった花形歌舞伎、今月は市川猿之助、市川中車、片岡愛之助、市川右近を中心にした顔ぶれで、エネルギッシュな舞台に汗を流している。 続きを読む

「冬の時代」 2015.04 紀伊国屋サザンシアター

 「大逆事件」「幸徳秋水」という単語を聞いて、その意味するところを即座に理解できる、あるいはある程度でもわかる人々が、現在どれほどいるだろうか。「大逆事件」とは、明治44(1910)年に起きた明治天皇の暗殺未遂事件だ。これを機に、当時の社会主義思想者は大弾圧を受け、地下に潜伏することになる。

 この時代の人々のことを描き、今から50年以上前の昭和39(1964)年に木下順二が激化したのがこの『冬の時代』で、劇団民藝によって上演されて以来、今回が50年の歳月を経ての再演となる。100年以上前の時代を、50年ぶりに再演する劇団の勇気は大したものだ。恐らく、初演時の出演メンバーはほとんどいないに等しい状況で、丹野郁弓はこの戯曲をどう現代に蘇らせるかに腐心したようだ。全三幕、10分の休憩を2回挟んで3時間を超える大作の台詞劇を、私には当時の「青春群像劇」として見せようとしているかのように感じた。 続きを読む

「新・八犬伝」 2015.04.20 中日劇場(夜の部)

 名古屋・中日劇場の花形歌舞伎は、昼の部が市川猿之助の責任公演、夜が片岡愛之助の責任公演で、それぞれが自分の得意とする演目で競り合い、お互いにゲストの役どころで顔を出すという方式だ。贔屓の役者が決まっている場合はどちらかに比重がかかるが、昼も夜もわかりやすい演目が並ぶ。

 参考までに記しておくと、昼の部が市川右近の『操り三番叟』で幕を開け、市川猿之助が早替わりと宙乗りを盛り込んだ『雪之丞変化』を見せ、愛之助と右近が付き合う形だ。 続きを読む

『田茂神家の一族』 2015.03.13 紀伊国屋サザンシアター

田茂神家の一族

2015.03.13 紀伊国屋サザンシアター

 どこかで聞いたような名前の一族である。しかし、おどろおどろしい一族の怨念が渦巻くような話ではない。東北のある村で、6期24年にわたり長期政権を敷いていた村長が、不慮の事故で勇退することになり、急遽選挙が行われることになった。そこへ、候補として名乗りを挙げた面々は、すべて、村長の係累ばかり。村長が田茂神嘉右衛門だから、候補者の苗字は全部「田茂神」である…。確かに、どこからどう見ても「田茂神家の一族」ではある。 続きを読む

『ウィズ~オズの魔法使い~』  2015.03.14  東京国際フォーラム

 私が劇評を書くに当たって常に意識し、書いていることだが、舞台の幕が開いて以降は、その評価のほとんどは役者が引き受けなくてはならない。演劇ファンが「○○が出るから」、「あの作品なら」という動機で劇場へ足を運ぶケースは多いが、「△△の脚本だから」ないしは「××の演出だから」という動機で芝居を観る割合はそれに比べて少ないだろう。もちろん、名前だけで観客を集めることができる脚本家や演出家もいる。しかし、割合は圧倒的に俳優が多く、その演技を生かすも殺すも脚本・演出次第だ。その結果、「今月の○○さんは良かった」、あるいは「期待したほどじゃなかった」という感想に別れるケースが多い。 続きを読む

「死の舞踏」  2015.02.20 博品館劇場

 朗読劇が花ざかりの昨今だが、成功の条件はシンプルだ。「脚本がしっかりしていること」「読み手が巧いこと」。この二つしかない。その代わりに、この二つがうまく組み合わさるケースはなかなかない。大道具や衣装の経費が節減でき、役者の人数も通常の舞台公演よりは少なくすむために、制作する側は楽に見えるが、舞台の幕が上がれば、役者は「逃げ場」がない。それだけに、よほどの練達の腕がないと、成果が出ない。条件がシンプルであればあるほどに、成功は難しくなる。 続きを読む

『Endless SHOCK 2015』  2015.02.05 帝国劇場

Endless SHOCK 2015

 2000年の初演以来、少しずつメンバーを変えながら、16年連続での帝国劇場公演である。その間、一貫して主役を演じ続けているのは堂本光一だ。ショーの世界を舞台にした和製ミュージカルで、ナンバーが定着したものもかなりある。「Show must go on」のテーマが作品を貫いており、その中でいろいろなエンタテインメントを見せる方式は変わっていない。 続きを読む

『志の輔らくご 2015』 2015.01.27 パルコ劇場

志の輔らくご 2015
2015.01.27 パルコ劇場

 立川志の輔がパルコ劇場で一ヶ月の独演会を初めて今年で10年目だと言う。「継続は力なり」とは言うが、一ヶ月同じ場所で、前座も使わずにたった一人での落語会を続けるのは並大抵ではない。 続きを読む

「一月歌舞伎座 昼の部」 2015.01.06 歌舞伎座

 お正月の歌舞伎座、昼の部は時代物の『金閣寺』で幕を開け、舞踊の『蜘蛛の拍子舞』、最後が世話物の『一本刀土俵入』と、濃厚なボリューム感のある舞台だ。

 『金閣寺』は天下を狙う大悪人の松永大膳が染五郎、軟禁されている雪姫が七之助、此下東吉が勘九郎、と若々しいメンバーで幕を開ける。染五郎の演じる大膳は歌舞伎では「国崩し」と呼ばれる悪人で、科白に重厚感があるのが良い。七之助の雪姫は可憐で美しいが、人妻の色気がまだ足りず、いかにも清楚なままなのが惜しい。勘九郎の東吉、科白のメリハリがよく爽やかに演じて見せる。歌舞伎とは同じ演目を違ったメンバーで繰り返し観るのが一つの醍醐味だが、こうしたメンバーで『金閣寺』を演じるのを観ていると、歌舞伎の世界が確実に世代交代を告げていることを改めて感じさせられる。 続きを読む

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