演劇批評

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明治座ダブル座長公演

今月の明治座は、通常の「座長公演」ではなく、「ダブル座長」だ。松平健が主演する「暴れん坊将軍」と「唄う絵草紙」の公演に川中美幸がゲストで出演、川中美幸が座長で演じる「赤穂の寒桜」と「人・うた・心」に松平健がゲストで出演するという贅沢なもの。例を挙げれば、昼の部は松平健の座長公演で川中美幸がゲスト出演、夜の部はその逆、ということだ。一ヶ月の公演の中で、二回の座長公演を観ることができるのは面白い。いろいろな意味で停滞し、暗いニュースが多い演劇界で斬新な試みだが、実は今回が初めてではない。昨年の三月をもって改築のため閉館した名古屋・御園座の「さよなら公演」で、ちょうど一年前に実現した顔合わせの東京公演である。
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志の輔らくご 2014

日本一チケットの取りにくい落語家と言われている立川志の輔のパルコ劇場一ヶ月公演も今年で九年目を迎えるという。一人で毎回三席、オリジナル、新作、古典と、休演日はあるにせよ一ヶ月続けるというのは尋常な話ではない。本人いわく、「武道館でやっちゃえば一回で終わるんだけど、落語ってそういう性質のものじゃないから」。まさにその通りだが、一ヶ月を噺し続けるのは並大抵の技ではない。しかし、気力・体力・技術がそれを可能にし、何よりも多くの人がこの公演を待っている。先年亡くなった志の輔の師匠・立川談志は天才とも異才とも言われ、名人の名をほしいままにした。さすがにその弟子だけのことはあるが、談志の芸が客を選ぶ性質があったのに比べ、志の輔の芸は良い意味で万人向けである。古典落語でも、「いかに現代のお客様に分かりやすいものにするか」に心を砕いているのがハッキリと分かる。また、オリジナルや新作でも、まさに「現代の落語」のあり方や本質を探りながら、自ら創り、練り上げている。師匠・談志の功績が平成に名人芸を遺したことであるとするなら、志の輔の功績は、落語の寿命を少なくも20年から30年は延ばしたことだろう。その証拠に、今の落語界に元気があるとは言え、男女を問わず若い観客の姿がずいぶん増えた。
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RUN TO YOU

多くの若者が、突拍子もないとは言いながらいろいろな夢を見ていた時代が、ついこの間までの日本にはあったような気がする。私の視界に入る若者たちがいささか元気をなくしているだけなのかも知れないが、今回、アミューズ・ミュージカルシアターで上演されている韓国ミュージカル「RUN TO YOU」には、ナイトクラブで働きながら音楽の世界でスターになりたい3人の若者の夢が語られている。かつての無謀で何も知らなかった頃の自分の姿を見るような想いでもある。ナイトクラブで働き、無断で寝泊りして練習を繰り返していた3人組が、社長にたたき出されるが、退職金代わりにもらったオーディションのチャンスで見事にデビューを果たす。しかし、「スターになる以上、恋愛は禁止」と、ジェミニと恋人の仲はだんだんに離れてゆく…。
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