演劇批評

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「歌舞伎座 顔見世大歌舞伎 昼の部」2017.11.17 歌舞伎座

 来年一月・二月の歌舞伎座での親子三代襲名披露公演を控え、松本幸四郎、市川染五郎、松本金太郎の三代が揃って現在の名前で舞台を踏む最後の公演となった。十一月の顔見世だけあって昼夜共にベテラン・若手と豪華な顔ぶれが並んでいる。その一方で、ベテラン勢にとっては今回が「一世一代」の気持ちで演じている物も多いだろう。歌舞伎界の世代交替を確実に感じさせる公演でもある。 続きを読む

『土佐源氏』2017.10.28 権現の森内「明治の商家」

 現代の演劇から薄れたものの一つが「土俗的なにおい」、平たく言えば「土臭さ」だろう。俳優をはじめ、舞台装置、効果、演出など、芝居を構成する要素がどんどん洗練されてゆく中で、昔ながらの「土臭さ」を持った一人芝居を、コツコツと全国各地で上演している坂本長利の『土佐源氏』。その初演は1967年、今からちょうど50年前のことになる。 続きを読む

『肝っ玉おっ母と子供たち』2017.10.16 能登演劇堂

 考えてみると、最近、ブレヒト(1898~1956)の舞台を目にする機会が一時に比べて減ったような感覚がある。20世紀の演劇史に大きな名前を刻んだ偉大なドイツの劇作家、ブレヒトの代表作の一つ、『肝っ玉おっ母と子供たち』に、84歳になる仲代達矢が無名塾の面々を率いて、能登演劇堂で29年ぶりに上演している。 続きを読む

『アマデウス』2017.09.30 サンシャイン劇場

 初演以来35年、このステージが450回目となった松本幸四郎の『アマデウス』。今回と同じサンシャイン劇場での初演の舞台を懐かしく想い出すと同時に、もうそんな歳月が流れたのか、とも思う。映画化もされたこの作品は、天才として知られるアマデウス・モーツァルトと、その才能に嫉妬する宮廷音楽家・サリエーリとの確執を描いたドラマとして、今回が九回目の上演となる。サリエーリは一貫して幸四郎が演じ続け、モーツァルトは江守徹の初演を経て、その後、幸四郎の子息・市川染五郎、武田真治、今回は桐山照史。モーツァルトの妻・コンスタンツェは大和田美帆。 続きを読む

「想い出のカルテット」EXシアター六本木 2017.09.30

 最近のテレビドラマでは珍しく大きな話題を呼び、つい先日最終回の放送を終えた「やすらぎの郷」。かつて、テレビ界に貢献した人が集まって暮らす無料老人ホームで起きるドラマの数々と、往年の豪華スターたちのキャスティングが注目を集めた。この作品、『想い出のカルテット』は、引退した音楽家たちが暮らす老人ホームが舞台で、2011年にルテアトル銀座で初演、14年に今回と同じEXシアター六本木のオープニング・シリーズとして再演され、今回が三回目の上演となる。黒柳徹子が1989年に当時の銀座セゾン劇場で始めた海外コメディ・シリーズの一作で、今回が第31弾となる。 続きを読む

『キャプテン翼』 Zeppブルーシアター六本木 2017.08.24

 数年前から、演劇の世界で「2,5次元」という言葉が使われるようになった。主にミュージカルだが、必ずしもそればかりではない。私の解釈では、マンガやアニメーションなど「二次元」の作品をもとに舞台化したものを「2,5次元」と呼んでいるようだ。元を正せば小説も戯曲も紙に印刷された「二次元」の世界の産物で、意味は同じでも、あえて素材をマンガなどに求め、新たな工夫を加えて舞台化する、というところに「2,5次元」の工夫があるのだろう。 続きを読む

『野田版・桜の森の満開の下』2017.08.09 歌舞伎座

 八月の歌舞伎座で恒例となった三部制の公演、今年も若手が大いに汗を流している。古典、新歌舞伎、新作など、バラエティに富んだ演目が並んでおり、若手・花形と呼ばれる世代の役者たちのエネルギーの発露を感じる。第三部は、野田秀樹が坂口安吾の『桜の森の満開の下』などの作品をもとに、自らの世界観で劇化した『野田版・桜の森の満開の下』。1992年の初演時は『贋作・桜の森の満開の下』となっていたが、脚本の内容も変わり、今回の「野田版」が決定版とも言えよう。亡き中村勘三郎の盟友でもあった野田秀樹の作品を、遺児の中村勘九郎・七之助の兄弟を中心に演じることに、勘三郎へのオマージュが感じられる。 続きを読む

「ドラムロック 疾風 TAO」六本木ブルーシアター

 多くの和太鼓集団が、それぞれの個性を持って活動を繰り広げている。大きなものになると直径が2メートルを超える迫力のある太鼓の音は、客席に座っている観客の身体に直接響くほどの重みを持っている。その響きや音質が、我々日本人が持っている「原初の感覚」を呼び覚ますのだろう。だから、多くの和太鼓集団が支持を集めているのだ。 続きを読む

『黒い雨-八月六日広島にて、矢須子』2017.07.10 富山

 まもなく、72回目の終戦記念日を迎える。私のように戦争を知らない世代でも、まだ戦争体験者の声を聴くことが辛うじてできる。しかし、後20年後に、それが可能かどうか。生の声、ではなくとも、戦争の悲惨な体験や経験を作品にしたものは多数あり、それに触れることで、自分なりに戦争について考えることは100年先、200年先でも可能だ。 続きを読む

七月大歌舞伎(松竹座)

 「大阪松竹座新築開場二十周年記念」「関西・歌舞伎を愛する回 第二十六回」の「角書き(つのがき)」が付いての、夏の大阪での歌舞伎だ。松竹座が開場してもう20年かと思うと、時の流れの速さに驚くと同時に、上方での歌舞伎公演がこうして続いていることにいささかの安心も覚える。もちろん、根付かせた上でさらに発展させるための、並々ならぬ努力と観客の支えがあってのことだ。どんなに良い芝居を上演しても、観客が劇場へ足を運んでくれなければ興行が成立しないのはどの芝居も同じ事だ。 続きを読む

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