架空の都市・フォーダムシティは、経済の中心地であると同時に、国内でも最も治安が悪く、麻薬の取引が横行している。市長のアルバートは裏社会の一掃を願い、敏腕の麻薬取締捜査官・ケントの協力を仰ぐものの、裏社会はマフィアの「コッピファミリー」に牛耳られている。そんな中、ストリートサーカスのチーム「ミラージュ」と出会ったケント、そしてケントを狙うコッピファミリーのスワン。やがて、「コッピファミリー」を追い詰めた「ミラージュ」のメンバーとケントが出会った相手は…。
 ストーリーの展開だけを追っていけば、細かな点で綻びがあるのは否めない。しかし、この作品は、ストーリーの内容に感動することに第一点を置いたものではなく、「ダンス・ミュージカル」という形態で、歯切れよく展開するドラマとダンスをどう見せるか、に眼目が置かれている。

 主人公のケントが屋良朝幸。狙うスワンが植原卓也。ローカルテレビのレポーターが平方元基。「ミラージュ」のメンバー・カルロスが越岡裕貴(ふぉ~ゆ~)、モニカが蒼乃夕妃、レイが石井一彰、ブルーノが高橋駿一、サラが奈々香、ジェイクが矢田悠祐、アルバートが松村雄基、という顔ぶれだ。52歳の松村雄基が、キャスト・スタッフの中で「最高齢」で頑張っている、という若い舞台だ。

 この芝居を観て、最近の若い俳優たちの身体能力の高さに改めて驚いた。「ダンス・ミュージカル」という性質がありこそすれ、誰もがキレの良い、見事なテクニックを披露する。私が20代の頃、マイケル・ジャクソンが来日し、「ムーンウォーク」と名付けたストリート・ダンスのテクニックを見て驚き、真似をする人が多く出た。しかし、当時はあくまでもごく一部を除いては「真似」の領域を出なかった。しかし、約30年の歳月を経て、今の若者は当たり前のようにムーンウォークやタップダンスなどの見事な技を見せる。これでは、とても「今の若者は…」などと言えた義理ではなく、自分の身体がキレを失ってゆくのを恨めしく思いながら、改めて身体能力と舞台の関係を考えさせられた。

 ジャニーズ事務所で多くのミュージカルへの出演だけではなく、振付なども手掛けている屋良朝幸が、身体の軽さや芝居でも最も安定している。このカンパニーを率いる立場の責任と緊張が感じられ、それが他のメンバーにプラスに働いているようだ。同様に、ミュージカル経験の多い平方元基、植原卓也の三人が、役柄の上もあり、エネルギッシュに舞台を引っ張っている。他のメンバーも、身体能力をフルに活用し、この舞台のキレ味の良さに貢献している。松村は、若者たちの「上置き」とも言うべき役回りで、日ごろは見せない役柄もまた一興だ。

 「演劇」には食べ物のように「旬」がある。若い時代でなくては演じられない作品、年を重ねて経験を積み、人生の味わいが燻し出されるようになって観客に共感を与える作品。あるいは年代に関係なく、多くの人の支持を集める作品。この「THE CIRCUS!」は、言うまでもなく前者で、旬の若者を集めてこそ成立する。企画・構成・演出・振付のすべてを、ダンスの世界で活躍する「TETSUHARU」に託したという、一種の冒険が生み出した舞台だ。舞台を創る上での職分は決まっているが、その垣根は徐々に低くなり、相互通行が楽な時代だ。昔の習慣を守らなくてはならないものも厳然としてある一方で、新しい試みを行うにはチャンスとも言える「混沌の時代」でもある。

 そんな中、こうした試みが今後、どういう発展を見せるのか。演劇界の胎動が感じられる舞台の一つだ。