「芝居」を観はじめて、45年ほどになりました。その間、多くの名舞台、名優に接してこられた事は、今の私には掛け替えのない財産です。しかし、その一方で、そうした名優も名舞台も、激しい歴史の動きの中に埋没してしまうのが現実です。私の批評家としての役目は、「今」の舞台がどのようなものであり、それをどう評価するか、が大きな仕事です。しかし、「今」の舞台は、先人たちが苦難の上に積み重ねて来たものの上に成り立っていることも事実なのです。
今の若い演劇ファンの方々には馴染みのない名前ばかりが並ぶかも知れませんが、こうした昭和の演劇界を支え、輝かせた名優たちの足跡を記すこともまた、一つの役割であると私は考えています。歌舞伎、ストレート・プレイ、宝塚、ミュージカル、小劇場演劇、大劇場演劇、落語…。これらの分野でひたすら「芸」を追い求め、私が教えを乞うことができた人々を含めて、3月1日(火)から毎週火曜日に一人ずつ、取り上げていきたいと考えています。
実際にご覧になっていない役者でも、「こういう人がいたのだ」と、何かを感じていただければ幸いです。