演劇批評

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『砂塵のニケ』 2018.03.26 青年座劇場

 1969年の開場以来、劇団青年座の拠点となっていた東京・代々木八幡の青年座劇場が、ビルの老朽化のために建て替えとなり、今回の第231回公演『砂塵のニケ』を以て一時休館となる。半世紀に近い歴史の中で幾多の名作・名優を生み出した功績は、日本の新劇史の一角にきちんと留めておくべきだろう。脚本は、若手の劇作家として活躍著しい長田育恵、演出は宮田慶子。プログラムにもあるが、最近は中津留章仁、野木萌葱、前川知大、蓬莱竜太、そして今回の長田育恵など、1970年代生まれの作家との取り組みが目立つ。これは青年座に限ったことではなく、演劇界の潮流が変わり始めた「潮目」の一つでもあろう。 続きを読む

「Endless SHOCK 2018」2018.02.05 帝国劇場

 今回の帝国劇場公演で、上演回数が通算1,600回を迎えるという。ファンにとっても、主演の堂本光一にとっても、この舞台のために日々を重ねている部分は大きいだろう。もちろんそれだけではないだろうが、多くの仕事を抱える中で、「この時期が来た」とおいそれとできるものではない。入念な準備を重ねた上のことで、千秋楽が終わった瞬間に翌年のことを考え始めるぐらいでなければ、この過酷な舞台を演じ続けることは叶わないだろう。 続きを読む

「二月歌舞伎座 夜の部」2018.02.03

 高麗屋三代襲名披露興行も二か月目に入った。一月の公演を経て、襲名する三人が、もう新しい名前に馴染んでいる感覚がある。襲名の不思議なところだ。 続きを読む

壽 初春歌舞伎 昼の部  歌舞伎座

 高麗屋三代襲名披露公演、昼の部は『箱根霊験誓仇討』(はこねれいげんちかいのあだうち)で幕を開ける。タイトルからもわかるように仇討ち物だが、滅多に上演されない。前回の上演が平成16年12月の京都・南座の顔見世興行、その前は昭和53年10月の歌舞伎座で、十七世中村勘三郎の勝五郎、六世中村歌右衛門の初花、八代目松本幸四郎(当時、のちに初代松本白鸚)の滝口上野(たきぐち・こうづけ)と奴・筆助の二役という配役で、私が観た舞台もこれだった。東京では、実に40年ぶりの上演となる。ただし、前回の上演からタイトルが変わっており、本来は『箱根霊験躄仇討』(はこねれいげんいざりのあだうち)で、昭和期の舞台もそうであった。 続きを読む

壽 初春大歌舞伎 夜の部 2018.01.02

 今年のお正月の歌舞伎座は、37年ぶりの「高麗屋三代襲名」で幕を開ける。九代目松本幸四郎が二代目松本白鸚に、七代目市川染五郎が十代目松本幸四郎に、松本金太郎が八代目市川染五郎にと、それぞれが父の名を襲名する興行だ。どの襲名もおめでたいものだが、「三代」同時は稀で、親・子・孫、それぞれの世代が次の名を襲名するに相応しい活躍をしている、と衆目が一致しなければできることではない。それを二回できるのは、現・白鸚の言葉を借りればまさに「奇蹟」だ。前回の三代襲名は、10月、11月の歌舞伎座で行われた。私はまだ高校生だったが、三階席で観た二ヶ月の舞台はくっきりと焼き付いている。それから37年が過ぎたと思うと、あっという間だと感じると同時に、役者と観客が共に年月を重ねる芸能である歌舞伎の喜びと本質をも感じる。 続きを読む

「欲望という名の電車」2017.12.26 シアターコクーン

 初演から65年を経てもなお、多くの劇団やカンパニーで手掛けている名作である。アーサー・ミラーの『セールスマンの死』と並んで、現代アメリカ演劇の金字塔と称されることも多く、過去の舞台で言えば杉村春子、東恵美子、二代目水谷八重子(上演当時は水谷良重)、栗原小巻、樋口可南子、男優ではあるが「女形」の篠井英介、そして大竹しのぶと7人の「ブランチ」の姿を観て来たことになる。今回の舞台は、2002年に蜷川幸雄が演出したものの再演で、今回は演出にフィリップ・ブリーンが当たっている。 続きを読む

「かがみのかなたはたなかのなかに」2017.12.20 新国立劇場小劇場

 タイトルがすべてひらがなで、一瞬、上から読んでも下から読んでも同じ「回文」ではないか、と錯覚するような珍しい名前だ。2015年に長塚圭史の作・演出で上演されたものの再演で、登場人物は長塚を含め4人。「たなか」に首藤康之、「かなた」に近藤良平、「けいこ」に松たか子、「こいけ」に長塚圭史という配役だ。 続きを読む

「夢一夜」 2017.12.07

「夢一夜」 2017.12.07 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

 加藤健一事務所の100回目の公演は『夢一夜』というフランス系アメリカ人の劇作家、カトリーヌ・フィユーの作品である。現在は、「性的マイノリティ」については「LGBT」という言葉も一般的になり、理解が進み始めているが、そうした人々と、アメリカの「アーミッシュ」と呼ばれるキリスト教の純粋さを維持しながら生活する保守派の人々が主人公になった、面白い芝居を取り上げた。「アーミッシュ」とは耳慣れない言葉で、キリスト教徒がアメリカへ移民した当時の生活様式を基本とし、近代以前の伝統的な技術しか使わずに生活を送る人びとだ。電気を使わず、電話も家庭内には置かずに、集団の中で緊急時のために共用で置き、移動も自動車ではなく馬車を主としている。服装も生活も極めて質素で、現代の利便と欲望からは遠ざかった場所での生活を旨としている。 続きを読む

「十一月 歌舞伎座 夜の部」2017.11.24 歌舞伎座

 顔見世興行・夜の部は、『仮名手本忠臣蔵』から『五段目』と『六段目』、上方狂言の『新口村』(にのくちむら)、真山青果の『元禄忠臣蔵』より『大石最後の一日』と、ボリュームのある献立が並んだ。特に、最後の『大石最後の一日』は、来年1月、2月と親子孫の三代で襲名披露を行う松本幸四郎一家が現在の名で揃って踏む最後の舞台でもある。昼の部の批評でも書いたことだが、「大幹部」クラスはそれぞれの当たり役に一世一代の覚悟で臨んでいるような充実感と、その先を想う一抹の寂しさに溢れる。 続きを読む

「歌舞伎座 顔見世大歌舞伎 昼の部」2017.11.17 歌舞伎座

 来年一月・二月の歌舞伎座での親子三代襲名披露公演を控え、松本幸四郎、市川染五郎、松本金太郎の三代が揃って現在の名前で舞台を踏む最後の公演となった。十一月の顔見世だけあって昼夜共にベテラン・若手と豪華な顔ぶれが並んでいる。その一方で、ベテラン勢にとっては今回が「一世一代」の気持ちで演じている物も多いだろう。歌舞伎界の世代交替を確実に感じさせる公演でもある。 続きを読む

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