今回の帝国劇場公演で、上演回数が通算1,600回を迎えるという。ファンにとっても、主演の堂本光一にとっても、この舞台のために日々を重ねている部分は大きいだろう。もちろんそれだけではないだろうが、多くの仕事を抱える中で、「この時期が来た」とおいそれとできるものではない。入念な準備を重ねた上のことで、千秋楽が終わった瞬間に翌年のことを考え始めるぐらいでなければ、この過酷な舞台を演じ続けることは叶わないだろう。

 今年はライバルや劇場のオーナーなどの配役を大きく変更した。ライバルは中山優馬に、オーナーは久野綾希子にと色合いを変えた他、細かな部分での変更が施されているが、大筋は変わらず、エンターテイナーとして何があろうとも舞台を続ける、という堂本が演じる主人公・コウイチの「Show must go on」の精神を見せる舞台だ。2000年に、当時の最年少記録・21歳で帝国劇場の初座長を勤めて以来、18年目を迎え、白皙の美少年も、40歳という「節目」に近付いた。その間、怪我や事故などのアクシデントに見舞われながらも、まさに「Show must go on」を体現して来たことは、評価と驚嘆に値する。
 
 今まで、私はこの舞台で観る彼の姿を「憂い」や「翳り」といった言葉で表現して来た。根底にはそうした色合いを持っているのは変わらないが、今回の舞台を観て感じたのは、年を重ね、経験を重ねた上で得た「しなやかな勁さ」だ。今回、相手役に抜擢された中山優馬は24歳で、この舞台の初演時はわずか6歳。15歳年下の後輩と共に演じる舞台ながら、肉体的には堂本の方が遥かに鍛え上げられている。日々の鍛錬とストイックな仕事への姿勢が、こうしたところにも見て取れる。過去の舞台に比べると、アクションの負担はいささか軽く造ってあるものの、それにしてもこれだけの大仕事を続けているのは驚嘆に値する。一幕の見せ場である「階段落ち」での立ち回りの後に聞こえる息遣いの荒さ一つをとっても、それが充分に分かる。一回一回の舞台に全力を尽くすことを己に課し、カンパニーにも求めているからこそ、だろう。舞台を演じる上では当然のことだが、昨今、これが徹底していない舞台が散見されるだけに、自らの肉体と精神をギリギリのところまで追い込んでの舞台が眼を惹くのだ。

 メンバーの入れ替えがかなり行われたことで、カンパニーのトップである堂本の役割も大きく変わった。例えて言えば、中山優馬という後輩に対し、彼が体験して来た「舞台」というものを、芝居の中で見せ、教えることもその一つの役目だ。自分のライバルとなる存在の役である以上、彼を脅かす存在ぐらいにその力を伸ばすことが、抜擢されたことに対する恩返しでもあろう。カンパニーが濃密な集団であればあるほど、舞台の成果は高まる。このタイミングで一度それを修正し、新たなカンパニーづくりに挑戦することの辛さは、彼自身が一番わかっているだろう。しかし、この舞台を続けるためには、どこかのタイミングでそれをしなくてはならないのも事実だ。そのタイミングが、今年の舞台だったのだろう。今回、多くのマイナーチェンジが施された舞台が、これからどういう変化を遂げてゆくのか。1600回という一つの通過点を超えた『Endless SHOCK』が、自らに課した大きな課題であると同時に、今後の進化へ向けての挑戦ともなるだろう。